生ドラムかVドラムか問題
マイクで音を拾う
ライブハウスで聞く(聴く)音というのは、100%の本物の音ではないです。
と、いきなり禅問答か…(笑)??
いえ、禅問答などではなく、本当のことなんです。
例えば歌声は、生の本物の声を聴いているのではなく、電気的に増幅された、APを通した声を聞くことになります。
マイクで拾ってPAを通すと音が大きくなるけど、帯域が部分的に削られたり、逆に部分的に増幅されたり、ノイズが乗ったりして、100%の音とは違うものになってしまいます。
ご存知の人もいるかとは思いますが、コンデンサーマイクというのを使うと、その性能の良さから100%の音に近づけることはできます。
でも、いくら4Kだ8Kだと言っても撮影された映像が100%の本物とは違うのと同じで、電気的に増幅した音は100%の本物とはどうしても違うものになってしまうんです。
このコンデンサーマイク、よりシビアに精度が求められるレコーディングの現場では普通に使われていますが、ライブハウスではあまり使いません。
ライブハウスでは、コンデンサーマイクではなく、ダイナミックマイクというものを使っています。
ダイナミックマイクは、それこそ皆さんがマイクと言って想像する、アレです。
ボーカルで使う、SHUREのSM58なんかが馴染みだと思います。
このダイナミックマイクは、残念ながらコンデンサーマイクの様な再現性能を持っていないので、あまり本物っぽい音にはできません。
ではなぜこのダイナミックマイクが使われるかというと、耐久性と価格の問題なんです。
コンデンサーマイクは性能はいいけど、耐久性が低いのに高価で、ライブハウスの用途には向かないんですね。
だから、性能は落ちるけど、ダイナミックマイクが使われるんです。
もちろん、コンデンサーマイクを絶対に使わない訳ではありません。
部分的にコンデンサーマイクを使う場合も、あります。
ドラムの場合は?
で、話は、ドラムに…。
ライブハウスだと、ドラムの音もマイクで拾ってPAで増幅して、会場に流します。
これって、やはり生の100%の音ではなくなっている訳です。
PAを通して劣化してしまった音を、会場のお客さんは聞かされているんですね。
残念ですけど。
ただ会場が狭いと、ドラムの生の100%の音が行き渡ることも可能です。
そういう場合は、お客さんは「良い」ドラムの音を聞くことができます。
でも、100人クラスのライブハウスくらい大きくなってくると、マイクで増幅した音の割合が高くなってきます。
生のドラムの音だけでは、とてもじゃないけど会場中に響かせることはできません。
会場が大きくなればなる程、そしてロックなどで音が爆音になる程、ドラムを含めて全体が100%の本物の音から遠ざかっていくんです。
これは単純に、聞く音の劣化です。
音量はPAで増幅はするけど、それと同時に音質は劣化していくんです。
ということで会場のお客さんは、本物の音とは遠ざかった、ダメになった音を聞かされることになってしまいます。
もちろん、PAで増幅された本物じゃない音を前提に、その中で「良い音」「悪い音」を論じている人もいます。
ゲートリバーブをかけたスネアの音とか、わざとらしく増幅された音が好きな人たちもいます。
これを書いている店主の私も、ドラムなどの(電子じゃない)生楽器は、いつでもリバーブをかけたい派です(笑)。
本物じゃない音が、実は好きなんです。
そして話は戻りますが、増幅されたドラムの音で1番に感じる(気になる)のは、アタック音の違いですね。
本物の、あの、モノとモノがぶつかる「カチン」という感じの高域の音が、マイクを通すとなくなってしまうんです。
コンデンサーマイクで拾っている場合は結構な再現性があるんですが、ダイナミックマイクだと、だいぶ違う感じがします。
リアルに物がぶつかっている音なんて必要ないという人もいるかも知れませんが、ドラムの音の劣化で、一番に感じる部分がそこですね。
とにかく、リアルじゃなくなります。
いかにも、マイクで拾ってPAで増幅した音、なんですよね。
普通の人は、あまり気にならないのかなぁ…(笑)。
もちろん、ライブハウスや特定のコンサートによっては、ドラムの音を拾うマイクを全部コンデンサーマイクにして、時間をかけてマイクの位置を決めて、イコライジングも頑張って、ということをやって、だいぶ問題を解決している場合もあるとは思います。
が、あまりそういうことは、ないですよね。
コストもリソースも、普通のライブにはそんなにかけられません。
Vドラムという選択肢
そこで登場するのが、Vドラムです!!
Vドラムって、わかりますかね?
電子ドラムです。
Vドラムって、実はめちゃくちゃ音がいいんですよ。
まぁVドラムってローランドの商標なので、本来ここでは電子ドラムで統一するべきなんでしょうが。
ただ、ドラマーさんは嫌がりますよね、Vドラム…(苦笑)。
叩いた時の感触が絶対的に本物のドラムとは違うし、それこそ叩いていてその場で「リアル」なモノとモノがぶつかる高域のアタック音が、ないんですから。
でもね、このVドラムをPAを通して聞くと、生ドラムを(ダイナミックマイクで)マイキングして聞く音よりも、圧倒的にリアルな、本物のドラムっぽい音がするんですよ。
聞いてみれば、わかります(わからない人の方が多いかもですが…)。
単純に出音を生ドラムと比べてしまうと、そりゃ当然生の本当の100%の音とは違うんですが、ライブハウスの場合はマイクを通したドラムの音が悪すぎるので、比較として、Vドラムの方が生の100%の音に近い感じになるんです。
どうですか?
知ってましたか?
「Vドラムって、どういう用途があるの?」って、たまに聞かれるんですよ。
これまでは「レコーディングの時にマイキングの手間が要らないんだよ」「『データを録音』できてあとからでも音色も変えられるんだよ」って答えてきましたが、「ある程度の広さの会場の時に、ライブでめちゃ活躍するよ」っていうのも、加えました。
そう、広い会場で、Vドラムは優秀なのだ!!!
なので、練習用に家で使っている場合じゃないです。
もったいない!
ライブの時こそVドラムを使いましょう、と提案したいです。
ちなみにJAM SESSIONは店自体が狭いので、幸か不幸か(笑)、生ドラムの音がホール中に行き届きます。
よって、Vドラムの方が良い、という状況にはありません。
あ、でも、ドラムはマイクで拾ってますよ。
リバーブかけたいので(笑)。