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ボーカリストとしての心得

ライブに挑むにあたり、ボーカリストとして覚えておくべきこと。
伝えなければならないことがあまりにも多過ぎて、かなりの長文になってしまいました。
ご面倒でもどうぞ、最後まで読んで下さい。

ボーカルを名乗っていても、実際はカラオケしか知らないレベルの人がほとんどだと感じています。
バンド経験がないから、機材の扱いを知らない、という人たちだらけです。

ボーカリストって、バンドマンです。
バンドは、カラオケじゃないです。

バンドマンなら、機材はちゃんと扱って欲しいのです。
機材をちゃんと扱えないのは、ボーカリストではなく、カラオケさんです。

まず、絶対に知らなければならないことが、下記の3つ。

 マイクを叩くな
 マイクのグリルを握りこむな
 マイクを下に向けるな

そして、さらに付け加えると、

 勝手にマイクを差し替えるな
 マイクを譜面台や机に置くな

です。

 

マイクを叩くな

まず、マイクを叩くな、です。

学校の朝礼で校長先生とかがマイクをコンコン叩いて、音がするかどうかをチェックしたりします。
でもこれ、本当は絶対にやってはいけないことなんです。
カラオケでも、やってる人が多いのではないですか?

マイクが音を拾っているかどうかをチェックする時は、必ず「声」を使って行って下さい。

マイクは、打楽器ではないんです。
ライブハウスの機材は、カラオケボックスにあるものよりも、高性能で高価です。
叩いて壊したら、大変なことになります。
そして、マイク自体が壊れなくても、カラオケなんかよりも数倍音量を増幅しているので、コンコン叩いてスピーカーが飛ぶ可能性もあるんです(まぁ実際に飛ぶことは普通はあり得ませんがPAシステムに負担がかかるんです)。

バンドマンなら、そして本当にボーカリストなら、マイクを叩かないのは常識です。
それをコンコンやったりするから、PAさんはその非常識さに腹を立てるんです。
PAさんのほとんどが、マイクを叩く「カラオケ」レベルの自称ボーカリストさんに怒りを感じているんですが、それを顔に出す人と出さない人がいる、というだけの違いです。

マイクを叩く強さの問題ではありません。
マナーとしても、マイクチェックは「声」使って行わないといけません。
舌打ちしたり、「あ〜あ〜」と言ってみたり、「マイクチェックマイクチェック」と言ってみたり、そういうのでマイクチェックをして下さい。

軽くでもなんでも、叩くということは絶対に禁止なんだと、ちゃんと知っておいて欲しいです。
じゃないと、顔に出さないPAさんでも、怒って意地悪をしてきますよ!
「マイクを叩く奴がいたから、そいつのマイクは最後まで(音量を)あげてやらなかった」と、実際にあるPAさんが証言していました(笑)。

あと、ちょっと衝撃的だったのが下記の事例です。

うちの店の利用者でやっぱりマイクを叩く人がいて、その人に対して同席した別の人が「あ〜、ここの店はマイクを叩いちゃダメなんですよ」って、私の代わりに注意してくれたんですよ…。

でもね、基本、ライブハウスなら、「ここの店は」じゃなくて、全宇宙の店でマイクを叩くのは禁止なんです。
そんなの当たり前、常識中の常識ですから、お間違いのない様に!

叩いていい店というのがあるとすれば、正直申し上げて、かなり機材のしょぼい店です。
そういう店は店長さんが簡易的にPAを操作したりしていますが、そもそも機材の扱いなんて全くわかってないズブの素人さんだったりします。
店長さん自身が、マイク叩いているのを見たこともあります(苦笑)。

そういう店というのは、規模が小さくて、出力のないおもちゃみたいな機材しか置いてなくて、その機材をどの様に扱っても、例え壊れても、何でもOK、みたいなところです。
うちの店(とかライブハウスとか)と、そういうところとを一緒にしては、ダメですからね!

 

マイクのグリルを握りこむな

そして、「かっこよく」マイクのグリルを握り込んでしまう問題。

マイクの扱いを知らないカラオケさんは、歌う時にマイクのてっぺんの部分、グリル、を握り込んでしまいます。
グリルとは、あの金属のアミアミの部分のことです。

マイクのグリルは握り込んではいけないっていうことを、ちゃんと知っておいて下さい。

なぜなら、マイクはあのアミアミの部分全体で音を拾っていて、それを持っていい音になる様に設計されているからです。
アミアミの部分を握ってしまうと、手の触れている部分からは音が入りません。
そうなると、特定の帯域がカットされてしまい、自然な音にならなくなってしまうのです。
こもった様な、変な声になってしまう、ということ。

そして、アミアミの下の部分からも音を拾うことによって、「位相の反転」という物理原理を使ってハウリングを抑えているのですが、それができなくなった結果、ハウリングを起こします。

「ハウリング」って、わかってますか?
バンドマンなら、ボーカりストを名乗るなら、ちゃんと知っておいて下さい。
ハウリングっていうのは、「ピ〜〜〜〜〜〜〜〜」ってなる、あの高周波の音が出る現象のことです。

ライブハウスはカラオケと比べると、全体的に音量が大きいです。
音量が大きいと、どうしてもハウリングを起こし易くなります。
ライブハウスの音量だと、ハウリングを起こすか起こさないか、ギリギリのところで音作りをすることになります。

このハウリングのことも、ハウリングを起こさない様にするにはどうすればいいかも、ボーカリストなら知っていて当然なので、よく覚えておく様に!

ではなぜカラオケさんは、グリルを握りこんでしまうのか。

それは、テレビでビジュアル系のボーカリストとかラッパーとかがグリルを握りこんで歌っているの観て、かっこいいと思ってしまうから…(苦笑)。
ビジュアル系のボーカリストとかアイドルとかは、テレビだと、あれ基本、歌ってないです。
口パクですよ、歌ってるフリ。

もし実際に歌っていたとしても、イヤホンか何かしているでしょ。
そのイヤホンで返しを聞いているので、ハウリングとは無縁だったりするのです。
返しのシステム、モニターのシステムが、違うんです。

それか、テレビだと胸のところのピンマイクで音を拾っていたり、上の方からガンマイクで音を拾っていたりで、あの握ってるマイクが機能していなくても関係なかったりするんですよ。
ラッパーの場合は、言ってしまえば元々歌じゃないからモニター自体を必要としていないということで、歌声が返っていなかったりします。
ハウらないんです。

あなたが歌う環境はそれじゃないんだから、かっこいいと思って真似しなくていいんです。

ライブハウスで歌う時の基本は、マイクのグリルには一切触れないこと。
ちょっと指が触れることすら、基本ダメだと思って下さい。
マイクスタンドにつけたまま歌えばそんな問題も起こらないので、よくわからないっていう人は、基本、マイク自体に触れない様にするといいかも知れないですね。

そういうことがわかっていないと、ハウリングを起こした時に、余計にグリルを握って音を抑えようとするんです。
握れば握るほど、ハウリングは酷くなります。
もう、グリルには指一本触れちゃ、ダメ!

扱いのわかってない人がハウらせて、そのハウりを抑えようとマイクを握り込んでさらに悪化させ、とにかくその人からマイクを奪い取るためにPAさんがステージに飛んで行く、っていう面倒臭いことが稀に発生しています。

ちゃんそういうことを理解してから、ステージに上がってもらいたいものです。

 

マイクを下に向けるな

マイクを下に向けてハウらせる問題。

マイクを、下に向けてはいけません。
これ、状況わかりますかね?
歌ってない時にマイクを握っていて、自分の顔の方に向けずに、適当に下に向けている人がいるんです。

マイク持ったまま下の方で手を組んでたりしても、マイクは下を向きます。
これ、ボーカルさんの足の下にある、「フロアーモニター(フットモニター/転がし)」に、マイクが向いてしまうんですね。
これがハウリングの原因です。

カラオケとは違って、ライブハウスはボーカルさんの足元にフロアーモニターがあるんです。
大音量の楽器演奏の中でも歌声の返しが聞こえる様にと、このフットモニターがわざわざ置いてあるんです。
ここから、ボーカルさんの声が出ていて、ボーカルさんが自分の歌声を確認できる様にしているんです。
そのモニターにマイクを向けたら、ハウルでしょ、ってことです。

だいたい歌ってない時にマイクを握っているから、こういうことになるんです。
歌わない時は、マイクに触らない。
どうしても持っていたいなら(なぜそんなにマイクを持っていたいのか知りませんが…)、絶対にマイクは上に向けておいて下さい。

そして、どうしても扱いがわらかないなら、もうマイクには一切手を触れずに、スタンドにつけたまま歌った方がいいですね。

 

勝手にマイクを差し替えるな

そしてコロナの影響もあって、ご自身のマイクを持ってくるボーカルさんが増えています。
でも、機材の扱いを知らないカラオケさんが、勝手に店のマイクを抜いて、自分のマイクに差し替えたりするんです。
常識からしたらあり得ない話なんですが、カラオケさんによって何回か起こっているんです、これ。

機材は、電気が通っています。
PAさんに確認せずに勝手に抜き差しすれば、バチ、ってなって、機材を破損する可能性があるんです。
必ずPAさんに抜き差ししてもいいか、確認を取って下さい。
勝手なことをして機材を破損すれば、弁償ものです。

そして、機材の扱いがわからないのであれば、事故らない様にするためにはマイクの持ち込みはしないで下さい。
ライブハウス側は、利用者が常識を持って機材を扱うはずだという前提でいます。

どうしても常識がないというのなら、事故を避けPAさんを怒らせないために、もうライブハウスは使わない(カラオケに行って下さい)、全部PAさんに確認してから全部指示通りにする、常識を身につけてから出直す、のどれかですね。
まぁ、ここの文章をちゃんと読んで頭に入れてくれれば、常識はだいたい身について、問題を起こすこともそうそうはないとは思いますが…。

とにかくカラオケとは、音量、出力が格段に違う、ということをちゃんと理解しましょう。
そこをわかってないでカラオケと同じ感覚で機材を扱うと、壊れるし、PAさんは怒るし、ということです。

 

マイクを譜面台や机に置くな

そして、使ったマイクをちゃんとスタンドに戻さない、マナーの悪い人がいます。
マイクを譜面台とか、机の上に置いて、そのままステージを降りちゃうんです。
マイクを机に置くとか、まさにこれ、カラオケでやってることそのままですね。

マイクは落としたり水水没させたりすると、壊れる可能性があります。
落として「ボンッ」ってなれば、スピーカーの破損にもつながります。
繰り返しになりますが、カラオケと違ってライブハウスの機材は高価だし、高出力な状態になっています。
扱いを適当にすれば、破損するんです。
破損を避けるためには、マイクを使ったらちゃんとスタンドに戻す必要があるんです。

この、スタンドにつけずに適当にそこら辺に置くというは、非常に迷惑な行為です。
機材を破損しても構わない、知らない、という無責任さです。
PAさんは、当然怒ります。

ちゃんと戻せないのなら、スタンドからマイクを外さないことですね。
マイクがスタンドについたままでも歌うことはできますから、それが、事故などを避けるのには一番いいです。
もう、マイクには一切触らない!

 

「ちゃんと」ボーカリストさんになろう

ボーカリストって、バンドマンです。
バンドは、カラオケじゃないです。
バンドで使うライブハウスと、カラオケとでは、機材のシステムも性能も値段も全然違うので、同じ扱いではダメなんです。

自称ボーカル、でも実際は単なるカラオケさん、から、ちゃんと本当のボーカリストさんになりましょう。
PAさんがそのマナーの悪さに日頃一番「怒り」を覚えることが多いのが、このカラオケさんです!
PAさんに怒られない様に、気をつけましょうね!

機材をちゃんと扱って、マナーを守っていれば、普通はPAさんが怒ることはないんです。

常識とマナーを守って、ライブハウスに歓迎されるボーカリストさんに、是非、なって下さいね!

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